アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫「日本の四季」
制作レポート
『アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫』では、スケートリンク全体をキャンバスに、毎回多彩なアーティストがアート空間を演出しています。12回目の開催となる今シーズンは、美術・デザイン・建築等アート分野での活躍を目指す地元横浜に在学する高校生美術部員22名が、プロのアーティストと同じ土俵に立ちアートリンクを彩ります。国内外から数多くの方々(前回の有料入場者数は96,312名)が訪れアートとアイススケートのコラボレーションを楽しむ本イベントへの高校生アーティストの参加は、豊かな創造性と感受性を育む次世代育成プログラムとして、未来のアーティスト支援を目的にスタートする試みです。春から半年に渡り、神奈川県立横浜平沼高等学校美術部の皆さんが取り組むアートの創作現場をレポートします。
(部員22名、校長:榊原 圭子、美術部顧問:鵜澤 三智子)
創立116年という歴史ある神奈川県立横浜平沼高等学校は、伝統的に美術部をはじめ部活動が盛んで、全国きものコンクール(学校賞部門)文部科学大臣賞や神奈川県教育委員会・かながわ部活ドリーム大賞など数々の賞を受賞しています。
A班、B班、C班と3つの班に分かれて部員皆で意見を出し共同制作を開始。スケートリンクを囲む壁面は全部で5面あり、最初に大まかなテーマを考えてラフスケッチとライトアップのプランを発表しました。春には入学式と桜、夏には花火大会と浴衣、秋は焚火で焼き芋、冬にはアートリンクに訪れた今の季節の風景を映し込むアートの仕掛けを使って日本の四季の移り変わりをスケートリンクで滑る流れに合わせて表現します。アートリンクを見に来る方々に親しみを感じて楽しんでもらいたいという想いを込めて、様々なモチーフを描きます。
日本人の愛する美しい四季を通して日本の文化や祭事をアートで表現することに決定。また、グローバル教育研究推進校として、国際教育に力を入れている横浜平沼高等学校ならではの取り組みで、横浜赤レンガ倉庫に訪れる海外からの観光客やたくさんの方々に喜んでいただけるよう様々な言葉を取り入れたいと話し合いました。A班は「春夏秋冬」を英語のアルファベットでデザインした言葉を考えました。B班は「正月」や「おせち」を日本語で紹介します。C班は「Hello」や「Guten Tag」といった各国の挨拶の言葉で歓迎し、アメリカなら自由の女神、中国はパンダと竹のようなシンボルを描きたいと発表しました。
テーマやイメージを実際に制作するため技術的に取り組んでみたいことを、テクニカルディレクション担当のミラクルプロダクツ原田貴至さんに相談しました。原田さんは商環境やエンターテーメントを主とする空間演出のデザインや、演出の為のデバイス設計、システム構築を手掛けます。テーマを効果的に見せる方法や素材・加工や仕掛け等の技術的なこと、安全面についてなど様々なお話が繰り広げられました。
原田さんに今年のアートについて印象を伺うと「横浜平沼高等学校美術部の皆さんが創作したアートによって、表現される日本の文化と季節の移ろい。何気ない日常風景を描きながらも、生活の中で発見する喜びや驚きを表現するアイデアも盛り込まれています。」と話しました。日常がちょっぴり楽しくなるヒントを見つけてみてくださいね。
40m×23mの最も大きな壁面に取り組むA班は、机に10枚の原画をアクリル絵の具で描いています。フィルムに拡大スキャンして印刷するので引伸ばした時のぶれを防ぐため精度を上げようと努力しています。B班とC班は下絵をパネルに転写するため、碁盤の目のように定規で枡目を引き正確に配置するため慎重に作業しています。背景は白バックなので書き直して汚さないように緊張しながら形をとっていました。拡大するための比率の計算やパネルの扱いなど建築を志す高校生が主体となって楽しく教え合いながら、美術室の床一面にパネルを敷いてパネルの桟にのり、制作していました。屋外用ペンキを使った彩色が始まると、面積が大きいため仲間と協力してどこから進めるか、役目の振り分けと効率を考えたり、配色やイラストの統一感に気をつけているそうです。
美術部顧問の鵜澤 三智子先生は「共同制作で部員の結束が固くなった。高校生でも社会との関わりに参加できるのは大きな自信に繋がる」「SNSが普及している現代からこそ、自分の考えや思いを言語ではなくアートでどう伝えるか、模索するチャンス。部員たちがどんなふうにボールを投げかけてくるか、ぜひ多くの人に見て感じてほしい」と話します。夏休みはほとんどアートの制作に打ち込んできた壁面のアートを仕上げました。12月のオープンをお楽しみに!