やなぎみわステージトレーラープロジェクト2016
『日輪の翼』
2016年6月24日(金)~26日(日) 横浜赤レンガ倉庫 イベント広場にて開催しましたKAAT神奈川芸術劇場プロデュース やなぎみわステージトレーラープロジェクト2016 『日輪の翼』をリポートします!
住み慣れた熊野の〈路地〉から立ち退きを迫られた七人の老婆たちは、同じ〈路地〉出身の若者・ツヨシら が運転する冷凍トレーラーに乗って流浪の旅に出た。伊勢、諏訪、出羽、恐山、そして皇居へと至る道中 で、御詠歌を唱え、神々との出会いに至福を分かち合う老婆と、女漁りに奔走し性の饗宴を繰り広げる 若者たちの、珍妙無比な遍路行。滑稽と悲哀、解放と喪失、信仰とエロティシズム……。〈路地〉の先に 広がる遥遠なる旅に、人間の原初の輝きを生き生きと描きだした中上健次の痛快傑作。
本公演では、『日輪の翼』をベースに、『紀伊物語』の「聖餐」、『千年の愉楽』等からも路地の物語を盛り込み、一つの作品を創り上げられています。
十九歳の地図』で注目を集め、76 年『岬』で戦後生れとして初の芥川賞受賞 作家となる。77 年『枯木灘』で芸術選奨新人賞、毎日出版文化賞を受賞。
「紀州サーガ」と呼ばれる濃密で重層的な作品群を創出した。代表作に上記 のほか『日輪の翼』、『千年の愉楽』等。2016 年は生誕 70 年にあたる。
神戸市生まれ。1990 年代後半より写真作品を発表。ドイツ・グッゲンハイム 美術館、原美術館、国立国際美術館をはじめ国内外での個展多数。2009 年、ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表。2011 年から本格的に演劇活動 を始め、美術館や劇場等で上演を重ねる。KAAT では、やなぎみわ演劇プロ ジェクトとして 2011 年に『1924 海戦』、2013 年に『ゼロ・アワー東京ローズ最 後のテープ』に取り組み、『ゼロ・アワー』は終戦 70 年を迎えた 2015 年に北 米 5 都市を巡回した。京都造形芸術大学美術工芸科教授。
台湾で出会った移動舞台車(ステージトレーラー)に魅せられ、舞台車での演劇公演を企てたやなぎは、まず 2014 年の横浜トリエンナーレで、自らがデザインし輸入したステージトレーラーを発表、続いて PARASOPHIA 京都現代芸術祭 2015 のオープニングでは二条城をバックにポールダンス公演、京都市美術館前での「キャ バレーナイト」「中上健次ナイト」を上演。そのステージトレーラーを用いて試行錯誤を重ね『日輪の翼』上演へ 向け準備を進めてきました。 そして本年、満を持してステージトレーラーが横浜に演劇プロジェクトとして還ってきました。 これまでの KAAT との共同体制から発展し、劇場を飛び出し、横浜赤レンガ倉庫イベント広場での野外公演を 実現しました!(撮影:沈昭良)
我が舞台トレーラーは、2014年の夏に台湾の虎尾という地方都市にある小さな工場で産み落とされ、盛大な爆 竹音とともに初めて公道に出た。高雄港から船に乗り、横浜に到着、通関を経て日本に初上陸した。「移動舞 台車」というのはトレーラーの荷台が舞台になっているステージカーで、700~800台が、台湾中を駆け巡ってい る。ほとんどの目的は、歌謡ショーとカラオケで、寺の祭り、選挙運動のために出動する「貸し舞台」である。両 ウィングが上がるだけでなく、油圧の力で屋根が持ち上がるスタイルで、内装には、けばけばしい絵柄と電飾 が光り輝く。
私のトレーラーは、展開すれば大輪の「夏芙蓉」。中上健次の小説に現れる架空の花である。このトレーラーを 日本に召喚せねばならないと決意させた物語。それは、中上健次の小説『日輪の翼』だった。舞台トレーラーと 中上健次は、必然のように出会ってしまったのである。
海と山の狭間にある新宮を舞台に多くのサーガを紡ぎ続けた中上健次は、1982年に長編『日輪の翼』を書く。 彼は大胆にも、この作品によって、自らが紡ぐ物語そのものを、愛憎渦巻く故郷〈路地〉から出奔させた。登場 人物たちは、最終目的地を考えることなくトレーラーに乗り込んで出発し、郷愁をかかえたまま全国の聖地を巡 る。トレーラーに棲む7人の老婆は、生れ暮らした地を懐かしんで語り、御詠歌を唱え、茶粥をすする生活をし て、行く先々に束の間の〈路地〉をつくってしまう。同郷の運転手の若者たちは、老婆たちの望むとおりに、伊勢 へ、諏訪へ、恐山へ、そして皇居へとひた走る。終局のない巡礼を描いた『日輪の翼』は、摩訶不思議なロード ノベルである。
南方から黒潮にのって漂着したトレーラーは、6月に赤レンガ倉庫を出発し、目的地のない巡礼の旅公演を続 けることになる。旅路の先々で翼を開き、夜空の下に、有翼日輪の姿を現して光り輝くとき、ステージの片隅に グラスを置いて中上健次が酒を飲んでくれたら。永久に移動を続けていくだろうトレーラーの空洞(うつほ)の中 に乗りこみ、開演を待ってくれたらと願っている。
出演者は、俳優だけでなく、大地を踏み鳴らすタップダンサー、天空を舞うサーカスパフォーマー、その間を結 ぶポールダンサーのほか、巻上公一によりオリジナル曲を奏でるギタリスト、新内などジャンルも出自も多彩な 出演者たちがさまざまな趣向を凝らしています。独創的な中上健次の世界を織りなします。
(横浜公演撮影:bozzo)
期 間: 2016年6月24日(金)~26日(日) 18:00開場 18:30開演
会 場: 横浜赤レンガ倉庫 イベント広場 (野外公演)
料チケット:前売一般 4,000円/U24チケット2,000円/高校生以下割引1,000円/シルバー割引3,500円/当日4,500円(各種割引はなし)
原作:中上 健次
『日輪の翼』、『紀伊物語』より「聖餐」、『千年の愉楽』
演出・美術・衣裳:やなぎ みわ
音楽監督:巻上 公一 脚本: 山﨑 なし
オバ :
重森 三果 (和楽アーティスト)
SYNDI ONDA (歌手)
ななな (クラウン)
檜山 ゆうこ (ボイス・パフォーマー)
南谷 朝子 (俳優)
若衆 :
石蹴 鐘 (サーカス・パフォーマー)
上川路 啓志 (俳優)
辻本 佳 (ダンサー)
西山 宏幸 (俳優)
村岡 哲至 (俳優)
若い女 :
サカトモコ (サーカス・パフォーマー)
藤井 咲有里 (俳優)
MECAV (ポールダンサー)
楽隊 :
Saro (タップミュージシャン)
嶋村 泰 (ギタリスト)
照 明: 藤本 隆行 (Kinsei R&D)
音 響: 高田 文尋 (株式会社ソルサウンドサービス)
演出助手: 中野 敦之 (唐ゼミ☆)
舞台監督: 大久 保歩 (KWAT)
ステージトレーラープロジェクト・ディレクター : 粟津 一郎
プロダクション・マネジャー: 高橋 淳一
技術監督: 堀内 真人 (KAAT)
広報デザイン: 木村 三晴
プロデューサー: 髙樹 光一郎 (HIWOOD) / 林 美佐 (KAAT)
制作統括: 崎山 敦彦(KAAT)
主催・製作: KAAT 神奈川芸術劇場、やなぎみわステージトレーラープロジェクト
共 催: 横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
助 成: 一般財団法人地域創造、 公益財団法人全国税理士共栄会文化財団
照明協力: カラーキネティクス・ジャパン株式会社
やなぎみわの『日輪の翼』は、横浜での上演の後、中上健次生誕70年を祝して”生誕 70 年記念事業”として
中上の出生地、熊野の新宮市 でも上演をいたします。その後、高松港(瀬戸内国際芸術祭)、大阪(名村造船所跡地での公演)と、『日輪の翼』 そのままに、「老婆」たちを乗せ、巡礼の旅をしていきます。
□8月6日(土) 新宮公演 会場:和歌山県新宮港緑地
主催:「中上健次生誕 70 年記念事業」実行委員会
チケット:5月9日売出開始(イープラス)
□8月27日(土)~28日(日) 高松公演 会場:香川県高松港周辺
主催:瀬戸内国際芸術祭実行委員会
チケット:6月1日売出開始(イープラス)
□9月2日(金)~4日(日) 大阪公演 会場:クリエイティブ・センター大阪(名村造船所跡地)
※地方公演についての詳細は、やなぎみわステージトレーラープロジェクト(HIWOOD 内:03-3320-7217)にお問合せください。