横浜赤レンガ倉庫1号館は、2022年4月に館独自の振付家制度を始動しました。2期目(2024年4月~2026年3月)となる今期の振付家は、31名のエントリーから一次選考(書類選考)と二次選考(6名の審査員との面談)を経て、小㞍健太(こじりけんた)に決定しました。
小㞍健太は1999年に渡欧後、バレエ団やダンスカンパニーに所属し世界的な振付家の作品に多数出演。2010年に日本とオランダを拠点にフリーランス活動を始め、2017年よりアーティスト、研究者、技術者と協働リサーチやクリエーションを行うプロジェクトSandD(サンド)を始動し、ダンス表現における身体の在り方を探求しています。また、バレエ、オペラ、ミュージカル、フィギュアスケートの振付など幅広い活動を行っています。
2024年4月からの2年間、様々な対話機会に参加して横浜の文化拠点や地域との協働関係を深めながら、舞踊をはじめ舞台芸術の価値を広げる展開を目指しています。
2026年3月には、横浜赤レンガ倉庫1号館振付家としての小㞍健太の活動報告会を行います。

※初代振付家 梅田宏明(うめだひろあき)の活動はこちらをご覧ください。

 

1.オープンスタジオ
2.リサーチ・クリエーション
3.パフォーマンス
4.SandD LAB. Yokohama
5.海外での展開

1.オープンスタジオ

2025年12月に発表予定の新作ダンス公演に向けた創作プロセスを一般公開します。ダンサーとの創作や、ドイツ・ミュンヘンを拠点に活動する建築家・アーティスト、ハネス・マイヤー氏との共同リサーチの様子をご覧いただけます。また、一般向けダンス・ワークショップやマイヤー氏によるレクチャーも開催予定です。

【2025年度開催予定】
SandD_小㞍健太 オープンスタジオ
日程:2025年10月21日(火)~10月26日(日)
   ※一般公開は10月24日(金)〜26日(日)を予定しています。
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

※2024年度のオープンスタジオの活動内容はこちらをご覧ください。


2.リサーチ・クリエーション

振付家やダンサーによる身体的アプローチに加え、サウンドアーティストや照明・音響デザイナーと協働し、「縁側」という日本的な空間の概念を起点に、新たな舞台表現を模索します。さらに、建築家ハネス・マイヤー氏と共に、日本庭園や都市デザインの専門家とも連携。舞台美術のあり方や建築廃材の活用を通じて、舞台芸術と建築技術を融合させ、空間と身体表現の新たな可能性を探ります。


3.パフォーマンス

2017年に初演されたソロ・パフォーマンス『Study for Self/portrait』では、踊る空間の環境や歴史・文化的背景といった「場所の特性」が、身体とどのように関わり、変化を生むのかを探求してきました。そこから得た知見をもとに、本作では「縁側」という日本特有の空間に着目します。
「縁側」は、内と外のあいだに生まれる曖昧な領域であり、人と空間、身体と社会の相互作用が静かに交差する場です。この境界的な空間を通して、変わりゆく生活様式のなかで私たちの身体はどのように在り続けられるのか、そしてテクノロジーが浸透する現代において「豊かさ」とは何かを問いかけます。
オープンスタジオやリサーチ・クリエーションを経てコンセプトを発展させるなど、2024年からの2年間の活動をとおして作品をつくりあげ、2025年11月~12月に世界初演します。

【2025年度開催予定】
『The Self in Season(仮)』
◆横浜公演
日程:2025年12月5日(金)・12月6日(土)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

◆豊橋公演
日程:2025年11月29日(土)14:00開演、11月30日(日)14:00開演
会場:穂の国とよはし芸術劇場 PLAT
詳細:https://www.toyohashi-at.jp/event/performance.php?id=1862

※2024年度のパフォーマンスの活動内容はこちらをご覧ください。


4.SandD LAB. Yokohama(アーティスト養成プログラム)

プロフェッショナルなダンサーや振付家を対象とした短期集中ワークショップを開催します。知識・技術・表現力の向上を図り、次世代の創造的な舞台芸術を支える人材の育成を目指します。

【2025年度開催予定】
◆SandD LAB. Yokohama(アーティスト養成プログラム)
日程:2026年3月3日(火)~3月8日(日)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール


◆小㞍健太活動報告会/SandD Lab.プレゼンテーション
日程:2026年3月8日(日)予定 
一部:SandD LAB. Yokohama(アーティスト養成プログラム)受講生による作品プレゼンテーション
二部:横浜赤レンガ倉庫1号館振付家としての活動報告会および小㞍健太によるソロパフォーマンス

※2024年度のSandD LAB. Yokohama(アーティスト養成プログラム)の活動内容はこちらをご覧ください。

 

5.海外での展開
 

 
◆Aerowaves, Spring Forward 2025(イタリア、ゴリツァ)

Aerowavesは、ヨーロッパにとどまらず、世界中のヴィヴィッドなダンスシーンとの交流に目を向けています。Aerowaves Spring Forward 2025は、4月23日~26日にイタリアのゴリツァにて開催され、53名のプロフェッショナルによって選出されたヨーロッパで活躍する17か国21組のダンスのつくり手が作品上演を行い、250名以上のダンスプログラマーが世界各地から参加しました。
また、国際的なアーティストを招いて地元の若手ダンサーたちと既存の作品を再構築し、短いサイトスペシフィックバージョンを発表する取り組み「International guest artists at Spring Forward」を行いました。

今回、Aerowaves、ヨコハマダンスコレクション、城崎国際アートセンターとのパートナーシップにより、2024年4月より当館の振付家として活動する小㞍健太が招聘されました。小㞍健太は2025年1月と4月にゴリツァ(イタリア)で滞在制作を行い、現地の若手ダンサーとともに自身の過去作品『AHAI, Imaginary Landscapes』を再創作し4月23日にパフォーマンスを行いました。

【Aerowaves, Spring Forward 2025】
『International guest artists at Spring Forward』
日程:2025年4月23日(水)
会場:Unione Ginnastica Goriziana (イタリア、ゴリツァ)
詳細:Spring Forward 2025 – Aerowaves
https://aerowaves.org/spring-forward-festival/spring-forward-2025/
※パフォーマンスは2025年1月および4月の2度の滞在制作を経て上演されました。

Photo by Stefano Scanferla
AHAI, Imaginary Landscapes by Kenta Kojiri
Spring Forward Festival 2025 (Aerowaves Europe)

 
◆Les Franciscaines美術館(フランス・ドーヴィル)企画展関連事業

2024年8月、フランス・ドーヴィルにあるLes Franciscaines美術館にて開催された企画展「Mondes flottants, du Japonisme à l’art contemporain(浮遊する世界——ジャポニスムから現代日本美術まで)」の関連事業として、『Study for Self/portrait 2024』を上演しました。本作は、パリ在住の琴奏者・日原史絵による生演奏とともに披露されました。東洋と西洋の文化が交差する「ジャポニスム」というテーマに呼応し、クラシックバレエを起点とした身体表現に、日本の伝統楽器である琴の音色を重ねることで、異文化間の対話を試みたものです。繊細でありながら内に力強さを湛える琴の響きと身体との融合は、観客の感性に深く訴えかけ、詩的で静謐な空間を創出したとして高い評価を受けました。

詳細:Les Franciscaines
https://lesfranciscaines.fr/en/news/kenta-kojiri-takes-les-franciscaines-poetic-dance-journey

Kenta Kojiri at Les Franciscaines Photo: François Louchet

 
◆La Briqueterie CDCN(フランス国立振付センター)プログラム

2024年6月、パリ郊外に位置するLa Briqueterie, CDCN(フランス国立振付センター)にて開催されたプログラム「6 heures du soir en été」に参加し、中庭にて『Study for Self/portrait』(2021年の改訂版)を上演しました。

公演の後半には小雨が舞い始め、空間に微細な変化がもたらされる中、身体と風景、そして観る者の記憶までもが交差するような、詩的な時間が流れました。雨音が静けさを深めていく中、観客一人ひとりが自身の感覚と静かに向き合い、身体の動きが紡ぎ出す世界に静かに身をゆだねる時間となり好評を得ました。

詳細:La Briqueterie CDCN
https://www.labriqueterie.org/agenda/six-heures-du-soir-en-ete-2024


小㞍 健太 / KOJIRI Kenta

ダンサー・振付家。
千葉県出身。1999年ローザンヌ国際バレエコンクールにてプロフェッショナル・スカラシップ賞受賞。モナコ公国モンテカルロバレエ団、ネザーランド・ダンス・シアターに在籍し、イリ・キリアンをはじめ、マッツ・エック、ウィリアム・フォーサイス、オハッド・ナハリン、ウェイン・マクレガー、クリスタル・パイト、アレクサンダー・エックマンなど世界的振付家の作品に出演し、国際的に経験を積む。

2010年よりフリーランスに転身し、ダンサーとしての活動と並行して創作にも力を入れる。『Study for Self/portrait』(原美術館)、『At the Core』(パリ日本文化会館、フランス国立ダンスセンター)、『Engawa, Imaginary Landscapes』(横浜赤レンガ倉庫1号館)を発表するなど国内外で活動。

2017年より「SandD」を始動。ジャンルや世代を横断した共同制作を通じて、ダンサーの身体の可能性と舞台芸術の新たな形を探っている。フランスやスイスなど海外の文化機関との連携や、地域コミュニティとの協働にも力を入れ、国際的・社会的な文化交流の場として舞台芸術の幅を広げている。

そのほか、オペラやミュージカルの振付、フィギュアスケート日本代表選手への表現指導・振付を手がけるほか、Dance Base Yokohamaの設立に関わる。城崎国際アートセンター、穂の国とよはし芸術劇場PLAT「ダンス・レジデンス」のレジデンスアーティスト、「Vitality.Swiss」プログラム・アンバサダー、ダミアン・ジャレ作品の振付協力/リハーサル・ディレクター、新国立劇場バレエ団Choreographic Groupアドヴァイザーを歴任。2024年4月より横浜赤レンガ倉庫1号館の振付家に就任し、活動の幅を広げている。

小㞍 健太 SNS X @kojirikenta / Instagram @kojirikenta / Vimeo

ー 主な活動実績・上演歴 ー
2025年4月『AHAI, Imaginary Landscapes』(Spring Forward Festival, Aerowaves Europe, Gorizia イタリア)
2024年12月『Engawa, Imaginary Landscapes』(横浜赤レンガ倉庫1号館2階スペース)
2024年8月『Study for Self/portrait 2024』Les Franciscaines, Deauville フランス
2024年6月『Study for Self/portrait』La Briqueterie CDCN, フランス「6 heures du soir en été」
2024年4月『Stillness in Motion』(Hauser & Wirth Paris)
2024年1月『幻灯』(NHKホール「NHKバレエの饗宴 2024」)
2023年6月『At the Core』(パリ日本文化会館、フランス国立ダンスセンター)
2022年8-9月『Kizuki-au 築き合う』(「Vitality.Swiss」連携企画事業-国際芸術祭「あいち2022」 )
2022年5月『Study for Self/portrait 2022』(KAAT神奈川芸術劇場 アトリウム)
2022年5月『ころり』(KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ, Dance Base Yokohama)
2021年8月『Study for Self/portrait 2021』(彩の国さいたま芸術劇場 大ホール舞台上)
2021年1月『The Threshold』(ゲーテ・インスティトゥート東京 ホール)
2020年9月『Study for Self/portrait 2020』(駐日オランダ王国大使公邸)
2019年11月『Arditti Quartet x Kenta Kojiri』(城崎国際アートセンター、神奈川県立音楽堂、愛知県芸術劇場 小ホール)
2017年8月『Study for Self/portrait』(原美術館 ザ・ホール)
2017年3月『Surface and Destroy』(城崎国際アートセンター)

ー 受賞歴 ー
2005年 第5回世界バレエ・モダンダンスコンクール モダンの部銅賞
1999年 ローザンヌ国際バレエコンクール プロフェッショナル・スカラシップ賞