横浜赤レンガ倉庫1号館 振付家の康本雅子さんの企画による『作り手同士のシェアワークショップ』。コアメンバーに選ばれたジャンルの異なるアーティストが、今の創作方法やアイデアをワークショップ形式でシェアします。
▶『作り手同士のシェアワークショップ』について
今回は、2026年7月29日(水)に実施した横浜赤レンガ倉庫1号館 振付家 康本雅子さんのワークショップの様子をレポートでお届けします。
レポート:横浜赤レンガ倉庫1号館スタッフ
7月29日「作り手同士のシェアワークショップ」の初回は、コアメンバーと本企画のスタッフ等の顔合わせの場ということもあり、自己紹介と、康本雅子さんによるワークショップを行いました。
コアメンバーには、様々なバックグラウンドをお持ちの、ジャンルの異なる“作り手”が集まりました。( コアメンバーのプロフィールはこちら )
皆さんが自己紹介の中で共通しておっしゃっていたのは、他のフィールドで創作に携わる方と出会い話すことで、何かこれまでとは別の視点が見えてくるのではないかという期待感と、不確定なことも多い新たな試みに勇気を持って飛び込んでくださったということでした。
また、これまでの創作活動の中で、「自分が創りたい作品を創ること」と、「生活のための作品を創ること」のギャップを感じられた経験がある方が多く、そのバランス感を模索されているというお話もありました。

ワークショップ(以下、WS)を始める前に康本さんから、自分がなぜ踊っているのか、自分にとってダンスを創ることとは?、創作の際に考えていることなど、じっくり時間を取ってお話しがありました。ジャンルの違いはあれど、創作の際の思考や悩みなど、他のアーティストにも共通することは多くあったようです。
印象的だったのは、康本さんが身体の感覚をとても重要視されているということ。そもそもダンスを踊るきっかけになった理由の一つも、「知らない感覚を味わいたい」から。「分からないことをそのまま味わうのがダンスの醍醐味」「体で感じること=生きている実感」など、言語化や説明ができずとも、人間が本来持っている「感じる力」を大切にしていることが言葉の端々から伝わり、その後のワークにも繋がっていきました。

体を動かすワークでは、ペアで体をほぐすところから始まり、最初のお話しにもあったとおり、体を通して相手を“感じる”ことを体験する内容となりました。
《ペアワーク》
●ストレッチ:背中や胸を広げる、首の緊張をほぐす
●相手の動きを感じる
自分の手のひらに相手の手を乗せた状態で、少しずつ後退していく。相手は足の位置を変えずに前傾していく。
→相手の体重を感じにくくなったら、そこが相手の限界。相手を感じようとすると、手からいろいろな情報を受け取れる。

●パーソナルスペースを探る
相手が自分に徐々に近づいてくる
↓
限界!と感じたところで、向きを変える/高さを変える/首の向きを変えるなど、なるべくミニマムな動きで回避する。
↓
心地の良い立ち位置を探る。
満員電車を温泉にするには…?
満員電車ではパーソナルスペースを確保できず、他の人と密着せざるを得ない…。そんな時、康本さんは自分の身体と周りの空間を緊張で満たすのではなく、「まるで温泉の中にいる時のようにリラックスさせるにはどうしたら良いか??」と考えながら、周りの人との心地よい立ち位置を無理くりでも探ってみているそうです。

●見つめ合う
向かい合った相手と、1分間見つめあう。ただひたすらに物理的に相手の目を空っぽにして見る、空っぽになって見られる。距離は変えてよい。一方が近づくと相手も近づいたり、お互いにゆっくり近づいたり、急に離れたり。慣れると緊張以外に思考する余地が入ってくる。

《全員でのワーク》
●暗闇で音楽を創る
部屋の電気を消す。参加者はそれぞれ一つ自分の単語を決めて、目を閉じて部屋の中をウロウロしながら、好きな場所でその言葉を発する。同じ言葉であれば何回でも発語して良い。その時の気分に合わせて、声の大きさや高さ、言葉の速度、声色などを変えてみる。
視界が暗いと声がどこから聞こえてくるか、その高低さや方向が立体的に感じられてくる。
ワークの1回目が終わった後、「演出的に考えてしまう」「バランスを取ろうとしちゃう」「声を発する時に緊張する」といった反省?や、「コミュニケーションとして誰かに呼応してみたら良い感じだった」「上を向くと言葉が響いて気持ちよかった」といった気づきが上げられました。他の人の意見や感想も踏まえ、単語を変えて2回目にチャレンジしたところ、最初よりも自分が自然体でいられるスタイルを発見した方が多かったようです。

《最後のワーク》
●5分でダンスをつくる
【タイトル:魔法 / 使用できる小道具:A4用紙 / 何をもって「魔法」とするのかが振付になる】
最後に「いきなりダンス作品!?」と驚いた様子でしたが、ここまでのワークでそれぞれ心と感性が開き、そしてそもそもクリエイティビティを持ち合わせたアーティストたちの集まりだということもあり、紙を道具として取り入れた人、体の一部として使った人、ストーリー性のある作品を創作した人、他の参加者も巻き込んだ人など、多種多様な作品が生まれました。
康本さんから敢えてそのような話はなかったものの、それまでの康本さんの言葉の端々やワークから、自然に参加者それぞれの“ダンス”の解釈の幅が広がったのではないかと思います。


今後の「作り手同士のシェアワークショップ」では、コアメンバーによるワークショップを行います。その内容についても随時レポートを更新してまいりますので、ぜひご覧ください!
Photo:伊藤浩平